オーディオ評論家に聞くM-Audio IEシリーズの音質
録音スタジオやゲームメーカーでの勤務経験を経て、音響専門誌での執筆を開始。プロ、民生オーディオ全般に対応できるテクニカルライターとして活動中の岩井 喬氏がM-Audio IEシリーズの音質を語ります。
Ultimate Earsがカスタムイヤモニター業界で80%のシェアを有しているのは、音質に最も厳しいミュージシャン達がその音質を評価した結果です。ステージでのカ ナル型モニタリングシステムに革命を起こした業界標準のUltimate Ears社は、アンダーワールド、ジャミロクワイ、スティーヴィー・ワンダー、セリーヌ・ディオン、ノラ・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、ベイビー フェイス、ボーイズIIメン、マドンナ、マルーン5、U2を始めとする数多くのミュージシャン達へカスタム・イヤモニターを提供してきました。その技術を 応用し各界から高い評価を得ているUltimate Ears社の技術を採用したM-Audioの「IEシリーズ」をオーディオ評論家の岩井 喬氏が語ります。
M-Audio IE-40
エッジ感が強めのエネルギーに溢れたパワフルなサウンド ー 同 社カナルヘッドフォンラインナップの最上位機種である。不測の事態でケーブルが断線してしまっても本体からケーブル着脱可能という、メンテナンス性も備え たモデルであり、カラフルなバリエーションも用意し、ファッション性も持ち合わせたマルチな高級機だ。中低域用の再生ユニットを2つ、高域用に1つ、合計 3つの再生ユニットを搭載しており、全帯域にわたって、エッジ感が強めで、エネルギーに溢れたパワフルなサウンドを持っている。量感溢れる低域は基本的に ベースのアタック感を大事にしており、その流れでギターの帯域までを豊かに響かせている。アコギターのアルペジオ奏法やクリーントーンのギター、ヴォーカ ルなどは軽やかで明瞭なサウンド傾向。中高域がカラッとして、ドライな軽快さを演出しており、量感のある低域を重く引きずるような印象がまったくしない。 高域の音像は細めとなり若干輪郭を強調するような色付けを感じるが、音楽を楽しく聴かせることに重点を置いたような音作りである。
岩井 喬氏が思う得意な音楽ジャンル
ギターの表現力に優れ、アンプで鳴らしている雰囲気まで包み隠さず再現している。圧倒的にロック向きサウンド。クリーントーンの輝きに満ちた明瞭度あるサウンドも魅力的だが、ディストーションサウンドも小気味良く、かすれ具合まで良く見える。
M-Audio IE-30
ナチュラルな楽器の質感表現に優れた、モニターライクな再現性 ー 中 高域と低域用に再生ユニットを分割させた2ウェイ方式カナル型イヤフォン。同社ラインナップの中では正統派な中級機となる。同じ2ウェイモデルの IE-20 XBとは低域ユニットの方式が違い、本機の方が音の出方もよりソリッドにまとまる。シリーズ共通のケーブル着脱機構や、スリムな外観も継承している。 IE-20 XBが カラーレーションを施し、聴きやすさと迫力あるサウンドにベクトルが向いているのに対し、本機はナチュラルな楽器の質感表現にウェイトを持たせた、 モニターライクな方向性のサウンドとなっている。低域は弾力感を残し、耳あたりの良い適度な量感を持っている。ギターやヴァイオリンの弦の爪弾き感の際立 ち、プレイニュアンスの豊かさ、艶めかしさは抜群である。キックドラムやスネアの突き抜けるクリアな響きは皮の質感まで伝わる。中高域もきつさはなくス ムースで滑らかな表情を見せる。クリアで澄み切ったピアノはローエンドの音までしっかり響いてきた。非常に色付けが少ないサウンドだ。
岩井 喬氏が思う得意な音楽ジャンル
中高域のエッジ感、ソースに対しての的確な音色の再現性からクラシックやジャズなど、生の楽器の質感の良さが問われるソースの再生に効果的だ。ニュートラル基調のサウンドなので、ポピュラーソース再生でも何ら問題はない。
M-Audio IE-20 XB
少音量でも十分な解像度と低音の豊かさを発揮するサウンド ー カ ナル型によく用いられるバランスドアーマチュア型ユニットを中高域側に配し、低域側はこれまでのインナー型に用いられていた大きな口径の再生ユニットを用 いた独特な2ウェイ方式のカナル型イヤフォンだ。同社ラインナップの中でも異色なモデルであるが、ケーブル着脱機能など基本的なコンセプトは引き継いでい る。通常のカナル型ではありえないほど量感溢れる低域とギターやヴォーカルの粒立ちと輝きを感じるエネルギー量の豊富な中高域が絶妙なバランスとなってい る。少音量でも十分な解像度と低音の豊かさを持っているのでどんな場所でも充実した音質で楽しめる。ピアノは拡散気味であるが、すっきりとした女性ヴォー カルなど、繊細な表現力も持ち合わせる。
岩井 喬氏が思う得意な音楽ジャンル
R&Bやヒップホップなど低域がリードするソースであれば軽快な高域も助けとなり、重厚なベースと解像感の良いヴォーカルが味わえる。またアナログ録音の骨太なロックサウンドにも良好で、ギターの弦のニュアンス感も良く引き出している。
M-Audio IE-10
ふくよかさとは対極にある、硬質かつ高解像度な表現力が持ち味 ー 同 社カナル型イヤフォンとしてはエントリークラスとなるモデルだ。基本的に同社ラインナップの外観は本機と同じ意匠となっており、細身の角ばったボディは独 特なものとなっている。元々同社はライヴでアーティストが用いるステージモニターを手がけていることもあり、ケーブルの着脱機能など、使い勝手も良く考え られている。バランス重視の傾向で低域はアタック感が中心となっているが、量感もほど良く特に不足を感じることはない。中高域はハリがあり音ヌケも良い。 音場がクリアに感じ取れ、個々の音は硬質な描き方をする。ふくよかさとは対極のサウンドだがきつさはない。解像度は高いのでオーケストラのハーモニーの描 き分けも得意のようである。
岩井 喬氏が思う得意な音楽ジャンル
中高域にかけてのクリアで煌びやかな表現が特徴的。ピアノの輝きやギタープレイのニュアンス感、ベースの弦の爪弾き感などエッジ感が強めである。ソリッドなロックサウンド、クールな女性ヴォーカル曲などに向くのではないか。
オーディオ評論家:岩井 喬氏のプロフィール
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオで勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆 を開始。現在でも自主的な録音作業に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作から オーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。






